ブログは、自分があの頃一体何をしていたんだろう?というのをふと思い出したくなった時に重宝する。そのために、というわけでもないけれど、日記の類は概ねそんなもんだろう。
とはいえ、この2020年は記録を見返さずとも忘れられない年になることは確かだろう。
一生のうち、そう思うような時間は何度もないだろう。
新型コロナウイルスが猛威をふるい、世界は大混乱に陥り、誰にも正解がわからないまま季節だけはいつもと変わらず冬から春へと移っていった。
世の中がどうなったかは、ネット上に腐るほど残っていくだろうから、個人的なことを記しておいたほうがいいかもしれない。ちょうど公演の時期にさしかかっていたこともあって、劇団ももろにその影響を受けた。
2020年
▶︎1月
劇団の新作本公演「甘い手」の東京公演が1月末、東京下北沢駅前劇場で初日を迎えた。
今までのワンシチュエーションコメディから大きく方向転換をし、時間軸や場所に縛られず短いシーンを重ねていく群像劇スタイル、セリフは全て博多弁、初の学園もの、などなど「スタイルを固定する」という方針そのものから舵を切った挑戦の一作。これが思いの外好評を博し、胸をなでおろすと同時に新しいガラパの劇作の方向が見えて15周年記念公演への光明も少しは見えてきたかなあ・・・など、中々に手応えのある公演となっていた。
・1/27小屋入り
・1/29初日〜2/2千秋楽
ちなみに、この頃すでに「コロナ」は、日本に上陸していたと記憶している。とはいえ、
「東京と北海道で感染者が出たって噂だよ」「へえ」
くらいの感覚で、正直に言えば危機感などほとんど誰も感じていなかったと思う。ちょうど東京で上演中というタイミングだったので記憶に残っているが、もし福岡にいたら日々の小さなニュースの一つとして、気にもとめていなかったかもしれない。
一応「そういう病気が日本にも入ってきてるらしいから気をつけようね」くらいの話はした記憶がある。それぐらいの感じ。
▶︎2月
東京公演を無事終え、福岡公演。
・2/10小屋入り
・2/12初日〜2/16千秋楽
公演をどうするかなどの具体的な話をした記憶はないので、この時期まだ福岡でのコロナの影響はほぼゼロだったのだと思う。
ちなみに、東京公演と福岡公演の間に、自分は3月の北海道公演のために札幌に2泊ほど行っている。この時「北海道で感染者が出ているので、マスクは一応したほうがいい」という話はした覚えがある。普段マスク嫌いの自分が、ちゃんとマスクをしていたので危機度は徐々に上がってきていたのだろう思う。とはいえ、札幌滞在の間にコロナの話は世間話程度で、道中はのんびりとしたものだった。
▶︎3月
札幌公演 中止(2/26に決定)
・3/4小屋入り
・3/6初日〜8千秋楽
甘い手札幌公演が中止になる。
劇団のラインを見直してみる。
2/25に「札幌公演にあたって、コロナ対策のステートメントを劇団から出しておいたほうがいい」というような話が出ている。
翌26日、椎木、川口、制作チーム、スリーオクロックと協議の上中止決定。
奇しくもこの日に、首相からの国内でのイベント自粛要請が出る。
北海道内での感染者増加がかなりシリアスな状況になってきており、札幌の現地制作側からも、今は来るべきタイミングではないかもしれない、という話になった。
劇場や、飛行機、宿のキャンセルなどを考えてもギリギリのタイミングだった。
この時はまだ知る由も無いが、上演予定だった週末は、北海道知事による緊急事態宣言、外出自粛要請と、とても道外からツアーで公演などできる状況ではなくなる。結果、中止は正しい判断だった。
東京でもちらほらと上演続行かストップかの判断に悩む声がtwitterなどに上がり始めていたと記憶している。とはいえまだまだ、しっかり対策して上演しよう、が大勢を占めていた。
ちなみに、2月の札幌滞在時、札幌雪まつり開催のちょうど前日だったので、道すがら会場を少し覗いた。夜だったので、人っ子一人いなかった。のちに札幌が全国に先駆けて感染者が増加した原因の一つに、雪まつりがあげられており、ひやっとした。1日ズレていたら、感染していた可能性はゼロではなかったかもしれない。最悪の場合、福岡にウイルスを運んでしまっていたかもしれない。あくまで可能性の話だけど、実は紙一重だったのかもしれない。
ただ、あの時期はまだ、情報も対策もほぼ世間には出回っておらず誰にもどうすることもできなかったと思う。
▶︎4月
トキヲイキル×ガラパゴスダイナモス
「ラバー・ソウル!」 公演延期(3/30決定)
・4/8~12
福岡のエンタメグループ、トキヲイキルとの合同公演も中止・延期に。
3/30日に、ぽんプラザホールの休館期間延長が決定し問答無用の上演実施不可。
その直前、3/28,29に福岡でも初の週末外出自粛要請が出ており、かなり緊張感のある状況になっていた。
もう少し遡れば3/20の段階で、3/20~31までの、ぽんプラザホール臨時休館が決まっておりこの段階で雲行きはだいぶ怪しくなっていた。
この直前に専門家会議から、今ではすっかりお馴染みとなった「三密を避けよう」という方針が発表され、ぽんプラザだけでなくそれに該当する(と判断された)市の施設は軒並み休館していた。
パピオビールームや大橋ゆめアールなどの施設もその対象となっていた。
3/20に「休館時期は3/31まで」との発表だったので、4月に入ればどうにか・・・と淡い期待を抱いて稽古は進めていたが、日に日に状況は深刻さを増していき3/30日に4月2週目までの休館延長。最終的に5/6まで延長と発表されている。
これが5/2時点。緊急事態宣言延長が出される予定となった今、さらに伸びる可能性はかなり高いのではないかなあと思っている。
とりあえず、コロナにまつわる自身の記録。
そういえば、ちょうど札幌公演が中止になった週末に、北九州にMONOを観に行った。あの段階で、上演をしているほうがどちらかといえば少数派になっていたような印象がある。とても好きな作品だったこともあって、劇場で芝居を観れる幸せを心から噛み締めた幸福な時間だった。
作り手として、観客として、次、劇場に行けるのはいつなんだろう。
まだまだ先は長そうだ。